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「良いって事よ」
遠慮しあう仲なら初めから一緒にいたりはしない。
お互い隠さない仲だからこそ言いたい事も遠慮もせず言える。
そんな風に笑い合っていると、背後でやり取りを見ていた和音が地の底から響くような声で二人の態度を咎めた。
「……お前ら、今はまだ就業中っつー事、忘れてねぇよな」
「あ、あぁ部長。済みません」
斎藤は慌てた様子で素直に謝るのに、秀臣は嬉しそうに両手を挙げると、わざとらしく返した。
「部長が“お願い秀臣君、お仕事して?”ってお願いしてくれたら俺、めっちゃ張り切れるっす」
「おー。んじゃあお前必要ないから帰れ」
「ちょっ……。嘘でも良いから“お前が必要なんだ”って言って!」
満面の笑みで手を振り“帰れ”とゼスチャーで示す和音に、いやいやをしながら秀臣が抱きつき無意味な抵抗をする。
「誰が言うか!」
そんなスキンシップ過多な秀臣に、和音は超絶鬱陶しそうな表情を一切隠さない。
思いっきり力を込めて秀臣を蹴倒すと、そのまま自分のデスクへと戻ろうとする。
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