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賑やかにすぎる時は速く、結局秀臣は報告書を仕上げただけで終業時間を迎えてしまった。
「お疲れ様です、部長」
「おー、お疲れさん」
「部長ぉぉぉ、飲みに行きましょう!」
斎藤他部下達が挨拶をして帰って行く中、一人仕事中より元気いっぱいの秀臣が早速和音を誘い始める。
だが、あくまで冷静な和音は周囲を観察して誰もいない事を確認してから口をひらくばかりだ。
「お前……。約束通り誰か誘ったのかよ」
秀臣の前には勿論の事、背後にも一緒に飲みに行こうという人影すらない有り様だ。
「俺と二人で!」
案の定といった答えに、事前にきちんと皆を誘ったかどうかすら怪しく、ジト目を向けつつ続けた。
「……てめぇ、ちゃんと他誘ってんだろうな」
「はい!」
そこまで言われて考える。多分皆、ひたすら可哀想な秀臣の空気を読んで、誘いを断っていったのだろう。
それなのに、当の本人は周囲の優しい気遣いには微塵も気付いていないらしい。
これでは逆に、彼らの方が可哀想だと、和音もようやく折れてやる事にした。
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