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「わーった。しゃーねぇ。おい今川、飲み行くぞ」
特に断る予定も理由すらない。あまり気乗りはしないが、秀臣とならばそんなに構える必要もないだろうと考える。
「あいあいさー」
ただ会社帰りに飲みに行くというだけなのに、秀臣はやたら嬉しそうで、こういうところは弟がいたらこんなだろうか、そう考えてしまう。
馬鹿な考えではあるのだが、一人っ子の身としては弟や妹という存在に憧れた時期もあったので、そうまで悪い考えではないだろう。
和音はしばし苦笑すると、秀臣を引き連れ行きつけの飲み屋に赴いた。
着いてすぐ席につき、適当につまみと生ビールを注文する和音に、待っている間の暇潰しとばかりに、秀臣が質問してきた。
「ところで部長、いきなり誘っといて今更なんすけど。今日は何か予定なかったんすか? 彼女とデートとか」
誘っておいて今更だが、和音はモテる。彼女の一人や二人、いてもおかしくはないだろう。
「んなもんいねーよ、馬鹿。第一、いたらてめぇの誘いなんざ、何がなんでも断ってる」
途端に、何を言い出すかとばかりに和音の機嫌が悪くなる。
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