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聞いてしまってからはっと気付く。
和音程の男ならば、まず彼女はいるだろうと見越しての軽い気持ちで非常にまずい質問をしてしまった。
そう判断すると同時に、だったら彼女と別れたばかりなのかなぁと、それなら良いのにとか、要らぬ推測まで重ねてみたりする。
「済みませんでした」
しかしそんな心中はさておき、ここは殊勝に見せるため素直に謝っておいた方が良いだろうと、飲み屋特有の騒がしい雰囲気に負けない程度の低い声で返す。
すると案の定、肝心なところで優しい和音が、半ば慌てたようにしてつけ加えたのだ。
「あー……。つーか、お前が気にする事ねぇよ。飲みの席じゃそういう質問、別にするだろ。普通に」
物凄く言葉を選んだ上の返しであったため、申し訳ない事をしたかなとちょっとだけ思う。
「でも、ちょっと軽率でした」
だが、それでも作戦は完全に成功したようだったから、内心で万歳しながらも、表向きしゅんとする秀臣の頭に、和音の大きくて温かい手が乗りくしゃくしゃと撫でた。
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