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とある中小企業のオフィスに、とある有能な男が勤めている。
彼の名前は宮白和音。まだ三十六歳という若さで、部長の座にまで上り詰めた。
入社してから今までミスらしいミスもせず、部長職にまでトントン拍子で上り詰めた、まさにエリートとも呼べる人材である。
そんな、一見順風満帆な人生を歩む彼にもそれなりに悩みはあるのだが――。
「部長ー、書類あがりました」
書類の束を抱えた社員がデスクに置かれ様、素早く目を通すのが最早日課となっている。
「おう。ご苦労さん。後でチェックしとくから、そこ置いといてくれ」
そんな、部長と呼ばれた彼が噂の人材である。
グレーとホワイトの、ストライプのネクタイに白いシャツ。それにダークグレーのツーピースを着こなす和音は、外見もまぁ、そこそこそれなりに良い方だ。
仕事も出来て出世頭で、しかも悪くはない容姿から、女性社員の熱い視線も注がれるくらいにはモテる。
逞しい身体つきに黒い艶のある髪を短くまとめ、切れ長の瞳が強気な印象を与える和音は書類から目を離さずにいる。
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