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「これ、俺の人生に必要っすか?」
嫌そうに一応といった感じで受け取ったものの、使う気は一切なさそうな返しで膨れられる。
「取引先から聞いてるぞ。お前の敬語、たまに笑えるそうだ」
しかし肝心の和音は取り合う気もないらしく、実に冷ややかな対応で一貫しているのだが、何故か秀臣には通じない。
それなのに、むしろ何か勘違いしてスイッチが入ったらしく、自慢気に腕組みする。
「ま、俺のドジって主に受け狙いだから仕方ないけど。第一ねぇ部長、俺の営業成績何位か知ってます?」
「興味ねぇな」
一応返事はしているのだから、和音はこれでも律儀な性格といえる。
そんないつもの二人の馬鹿なやり取りに、周りで見ているだけの同僚も、またやってるよとばかりにくすくすと笑っていた。
「えー? 俺愛する部長のために、身を粉にして働いてるのに。そんな可愛い部下の事、把握してないんすか?」
嘘泣きバレバレの嘆きに、和音はとうとう盛大にため息を吐いた。
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