第一章・―宣戦布告―

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「お前くるだろ?」 「何に?」 「今夜の飲みに」 「俺パス。先約あるから」  誰か誘っておけば許されるだろうと、手始めに斎藤を手込めにしようとしたが、それもものの見事に失敗してしまった。 「先約って誰とだよ」  相手が気になるので別に他意もなく一応聞いてみる。 「達哉(たつや)」  すると、案の定想定してあち相手の名前が挙げられる。  斎藤には仕事先に幼馴染みがいて、なかなか逢えない間柄でもあるので、こういう機会は人一倍大事にする。  何事に対しても真面目な性格で、約束は絶対に守るタイプなので、誘いを断ったという事は、今夜はその幼馴染みと飲み明かすつもりなのだろう。 「何だ。残念だけど、それなら仕方ないなぁ」  秀臣もそこはそれなりに理解しているので、あまり無理強いはせず素直に引き下がる事にした。  斎藤はそれで仕方なさそうに苦笑すると、片手を上げて返す。 「悪いな」  秀臣も仲が良い相手なので、向こうも今日という日を楽しみにしているであろう事は容易に想像出来る。
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