ハルト先生

7/13
前へ
/19ページ
次へ
しばらくして、ガラガラと戸があいた。 ハルト先生が颯爽と入ってくると同時に女子がざわめきはじめる。 先生が教壇に立つと、 「起立、気をつけ、お願いします。」 と日直が挨拶をする。 お辞儀をし、顔を上げるとハルト先生と目が合った。 柔らかい髪が額にかかり、くっきりとした二重の目尻が下がった優しい視線、シャープな鼻筋に薄い唇。 思わず見惚れるほど丹精に整っている。 口角をほのかに上げ私を見ている。 なんだか柔らかくて優しい毛布に包まれたような感覚に陥った。 私はすぐに視線を逸らし、着席をする。 一瞬の出来事だったが、なんだか胸がざわつき授業に集中できなくなっている。 こんな時は決まってあいつがでてくる。 もういないはずのあいつが。 やっと解放されたのに、まだ私を苦しめ続ける。 ハァ、ハァ、ハァ、ハァ もう息が苦しくて仕方がない。 机の中に用意しておいたはずのビニール袋がない。。。 苦しい、息をすればするほど苦しくなる。。。 助けてーーーーー 涙で目の前がボヤけはじめた時、クスクスと笑い声が微かに聞こえた。 私のビニール袋は嫉妬によってゴミ箱に捨てられたに違いない。 悔しいけど、苦しくてそれどころではない。 意識が遠のきそうになった時、暖かい毛布に包まれたような感覚が舞い戻ってきた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加