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しばらくして、ガラガラと戸があいた。
ハルト先生が颯爽と入ってくると同時に女子がざわめきはじめる。
先生が教壇に立つと、
「起立、気をつけ、お願いします。」
と日直が挨拶をする。
お辞儀をし、顔を上げるとハルト先生と目が合った。
柔らかい髪が額にかかり、くっきりとした二重の目尻が下がった優しい視線、シャープな鼻筋に薄い唇。
思わず見惚れるほど丹精に整っている。
口角をほのかに上げ私を見ている。
なんだか柔らかくて優しい毛布に包まれたような感覚に陥った。
私はすぐに視線を逸らし、着席をする。
一瞬の出来事だったが、なんだか胸がざわつき授業に集中できなくなっている。
こんな時は決まってあいつがでてくる。
もういないはずのあいつが。
やっと解放されたのに、まだ私を苦しめ続ける。
ハァ、ハァ、ハァ、ハァ
もう息が苦しくて仕方がない。
机の中に用意しておいたはずのビニール袋がない。。。
苦しい、息をすればするほど苦しくなる。。。
助けてーーーーー
涙で目の前がボヤけはじめた時、クスクスと笑い声が微かに聞こえた。
私のビニール袋は嫉妬によってゴミ箱に捨てられたに違いない。
悔しいけど、苦しくてそれどころではない。
意識が遠のきそうになった時、暖かい毛布に包まれたような感覚が舞い戻ってきた。
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