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行き交う人々の邪魔になっていることを重々承知しながら、私は盛大に溜め息を吐く。
「ばからしい」
自分にしか聞こえないボリュームでそう言い捨てて、くるりと向きを変え会社に歩き出した。
風が冷たい。
そろそろ、止めようかな。
何度も思ったけど、できない。
運命の人探しは。
いつの間にかただの自分の寂しさからできた隙間を埋める為だけのものになって。
そして、埋まらないことに気づく。
ホッカイロが入れてあるコートのポケットに手を突っ込み、冷えた手を温める。
こんな一件、忘れちゃおう。
あんな理想的な王子様。
きっと立派できれいなお姫様が居る筈。
私みたいに馬鹿じゃなくて。
私みたいに安い女じゃなくて。
私みたいに愚かじゃなくて。
汚くなんて無い。
聡明で気高くて純白のドレスが似合う。
童話の中にでてくるようなお姫様が。
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