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そう声を掛けてみるが返事が無い。
聞こえていないのか?
「あのッ?聞こえてますかッ?」
そう言って歩み寄り、肩に手を掛けようとして気付く。
ん?
ユラユラと揺れている男性の足元、そこにさっきから何かが滴っている。
目を凝らしてよく見る、そしてそれが血だという事に気付くのにそう時間は掛からなかった。
俺は掛けようとした手を引っ込めて後退してコルト-パイソンを構えて男性に銃口を向ける。
「フゥッ・・・・・フゥッ・・」
男性が揺れるのをピタリと止める。
俺も息を飲んだ。
男性はゆっくりと俺に向かって振り向く。
・・・・・・・・・・・・・そして絶句。
流れ落ちていた血の正体。
「嘘だろッ」
考えたくなかった事が目の前で起きているのだ。
振り向いた男性の顔半分は抉り取られたかのように陥没し、醜く歪んだ口からは後ろにある死体の主の頭部が髪ごしにぶら下がっている。
『ヴーッッッ・・・・・』
男性が口を開くと頭は歩道にグチャッと厭な音を立てて落ちた。
男性はその落ちたのに呼応するかのようにゆっくりと動き出し、俺の方へ向かってくる。
そのズルズルと引き摺る歩き方といい、男性の姿といい、死体といい、それはまるで・・・・・・・・
「・・・・・ゾンビってか?」
捻り出した自分の声は震えていた。
男性は歩道を降りて車道に。徐々に距離を縮めてくる。
対して俺はその場から一歩も動けないでいた。
「おい、どうしたんだよッ?動けよ!」
それでも身体は石のように重く動かない。
『ァァ・・・・・・』
くそっ、何だよ!何だよコレはッ!
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