0人が本棚に入れています
本棚に追加
その天使は、悪魔からの転生者であった。これは神様がにそう言ったことである。その天使はラファエルという名前を与えられて育った。
ラファエルは悪魔からの転生者ということで、天使たちは誰も近づこうとしなかった。
ただ、ラファエルはそういった周りの天使たちの様子を全く気にすることなく、毎日剣術の稽古ばかりしていた。
そのうちラファエルに剣で勝てる者が天界に全く居なくなり、ラファエルは神様に相談した。神様もそろそろラファエルを地上に出すことを考えていたらしい。
神様いわく、ラファエルの剣術は相当なもので、不在であった戦の神としての地位が与えられるほどの実力があるという。しかしラファエルは悪魔からの転生者なので、神としての名をもらうには罪を贖わなければならない。
ラファエルは悪魔として死んだときに、一緒に悪行をしていたという黒魔術師の人間の女が居たという。その女を地上で探し出し殺すことが条件である、というのである。
当時恋人同士だった頃は14,5の少女であったが、彼女は29の女性に成長していた。名をイアリーと言った。イアリーは幼い頃から一人黒髪を持つという理由で魔女と迫害されて育ち、実際に強力な魔術が自分でも意識しないうちに使えるようになったという。現在は召喚魔法が暴走し、多数の人民を殺した咎で指名手配となっており、森の奥深く隠れ住んでいる。
ラファエルは彼女を探し出し、すぐ彼女だと解った。イアリーもラファエルを一目見て、彼が誰なのかをすぐに理解した。
ラファエルは彼女を殺すことができなかった。愛するかつての恋人を、自分でわからずなぜか魔術を使える以外、何の罪があるのだろうか。この女性を殺すにはあまりにも忍びなかった。二人は再び愛を誓い合う。
神は千里眼で二人を見張っていたが、約束を破ったラファエルと、多くの咎を持つイアリーに、雷を落として殺してしまう。
数年後、ある軍人の夫婦のもとに、男女の双子の子供が生まれたという。
男の子にラファエルという名前が名付けられ、女の子にはイアリーという名前がつけられた。
男の子は幼い頃から天才的な剣術の腕を発揮し、女の子は人智を揺がすほどの強力な魔術が使えたという。二人は力を合わせて、国を平和にするためにその力を発揮し、のちに英雄として長く人々に語り継がれたという。
最初のコメントを投稿しよう!