一話 黒い殺し屋は闇を切る。

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犯罪件数の減少? 都合よく減った人口? 全ては陰謀だ。 二つは数値的に事実であるが、それを仕向けたのは日本政府だ。紛れもなくあの殺し屋を認める発言が国民を騙し、騙し、騙し続けている。 穴だらけだ、今のこの国は。見えない落とし穴でいっぱいなのだ。しかし皆、自分がそれにはまっていることに全く気づいていない。傑作だ。 国が国民を騙している。 一国規模のマインドコントロール…ゾッとする。 だから私はここに記す、我が国民が陥れられた国の罠の実態を。真摯に受け止めて欲しい次第である。 若き政治家、速見斗一。今のは彼が発表した現代における日本社会の実態という文書の一部である。これが公表されてから七分後、速見の死亡報告がされた。死因は射殺。 考えるまでもない…殺し屋の仕業だ。正義を貫こうとした挙げ句、彼はこの闇に飲み込まれたのだ。 「失笑…というか、あからさますぎだ。政府に不利な文書の発表から七分後に死亡? はは…馬鹿すぎる。何故誰もおかしいと思わない? 何故誰も速見が……」 男の頬を涙が伝った。 「なんで速見が…」 哀しみの中にある静かな怒りは隠れていなかった。 速見と彼は昔からの親友だった。いつからか連絡はつかなくなったが政治家として世に出始めた頃、ふたたび交流が始まった。
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