一話 黒い殺し屋は闇を切る。

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まず「カラスの牙」は彼の武器を指しているのだろう。辿り着いた先に武器、もしくはそれを示す何かがあるに違いない。そして重要なのは「電気の回路」だ。単純だ。読んで字のごとくそれは電気の通り道を指す。すなわち電線なのだ。そしてそれに目印を記せるものとすれば… 「電柱を辿ればいい」 まず近くにあった電柱を見る。そこには矢印が書いてあった。それが指し示すのはまた電柱だ。その電柱に同じく矢印があり、また別の電柱を指している。 きりがないので行程は省く。 そうして辿り着いたのが… 「ここ、銀行だよな」 まさか、こんな場所で? あり得ない。私はからかわれたのか? しかしそれは直ぐ様否定された。答えは銀行そのものだった。 「バード銀行…剣崎支店」 ここは剣崎市。そしてこのバード銀行はこの地方一帯に展開する地方銀行だ。しかしまさかここまで象徴的だとは…。 唖然としていた私の肩を誰かが叩いた。つい反射的に思いきり振り返ってしまった。 「あ…すいま……」 そこにいたのは闇を具現化したような雰囲気を漂わせた男だった。全身黒という異質な服装もむしろそれらしく映り、彼はまるで鴉のようだった。そう、彼の眼は赤色だ。 「あなた…鴉か?」 男は軽く頷くと初めて口を開き、声を発した。若き青年の初々しさが垣間見え、そこになにか影の浮かぶ声だった。 「私が殺し屋鴉、お前の依頼を受けた。話を聞く」 鴉は表情を変えずに淡々と話した。
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