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亜弥は、彼氏と別れた。
理由は簡単だった。
亜弥の脳裏には、常に佐藤がいたからである。
しかし1年半も付き合った彼氏との別れは、亜弥に想像以上の打撃を与えていたのだった。
亜弥自身は、わかってはいなかった。
ただ、別れの報告を一刻も早く佐藤に伝えたかった。
佐藤に、構ってほしかった。
放課後までの間、ずっとそれだけを考えていた。
どういう風に言えば佐藤が自分を心配してくれるのか。
どういう仕草で、どのタイミングで言えば佐藤の心を掴むことができるのか。
数学が唯一苦手な亜弥であったが、頭をフルに回転させて考えていた。
計算しつくした、プロセス。
自分の頭の中でのシュミレーション。
既に亜弥には佐藤の幻覚が見えていた。
しかし亜弥はなんとも思わなかった。
終礼が終わり、教室を出て、亜弥は佐藤の部屋の前で立ち止まり、深呼吸をした。
私は、やってやるんだ
そう自分に言い聞かせ、扉を4回ノックして、ドアノブに手をかけた。
どうぞー
佐藤の声を確認し、静かに力を入れてドアを押した。
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