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一瞬リンの体がビクッと反応したが、「知らない」と応えた。 構わず続ける旬。 「俺の家って名家なのな、でも母さんが何年か前に倒れてさ、何処の医者にみてもらっても昏睡状態から回復しなくて、丁度その頃に小耳に挟んだんだ。全知全能の心臓の話し。それさえあれば、母さんは目を覚ますんじゃないかって」   少しの沈黙の後、リンが口を開いて言った。 「誰も笑わないよ、あんたの話し」 「え?」と旬がリンを見上げる。 「大切な人が居て、その人を救いたいから、きっと人は何にでもすがりつくんだと思うから」 「リンって優しいのな」と笑い出す旬に、リンはきびすを返して「本屋さんに寄らなきゃいけないから」と帰って行く姿を旬は見えなくなるまで見続けていた。
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