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「入っていいぞ。」
誰であるか確認しなくても、ノックした人物を容易に想像できる。
「お兄ちゃん、お帰り。」
ドアを開け、こちらを覗く薄茶色の瞳はまるでガラス細工のように透き通っている。最近、目に掛かるほどまで伸びてきた黒髪を手で払いながら、こちらに歩いてくる人物は妹だ。
「ただいま。美優(みゆ)はいつ帰ってきた?」
「お兄ちゃんの15分前くらいかな。」
笑顔でそう答える美優の顔はこの頃母に似てきたように思う。中学に通う美優は同じように今日2年生に進級し、始業式を終えて帰ってきていた。
美優は前髪が気になるのか、手ですいている。
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