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「すでに葵(あおい)様が席について居られます。早く呼んで来るように仰せつかりました。」
理由はすぐに判明した。今日はいるのか。使用人が怯えているのにも納得がいく。今まで、命じられたことを済ますのに時間が掛かった使用人が何人も辞めさせられたのを知っている。この使用人もあの女に辞めさせることを恐れているのだろう。
「分かった。優美を連れて、すぐに向かう。先に戻り、あの女にその旨を伝えてくれ。」
使用人はいつもより速い動作で部屋を後にした。
「お兄ちゃん・・・」
先ほどまで笑顔であった美優の表情が暗くなっている。俺が藤崎に世話をしてもらったように、女性である妹はあの女から直接教育を受けた。子どもにとってはスパルタなどの生半可な言葉では表せないほどの厳しい教育を受けていたため、その恐怖が今も染み付いているのだろう。
「大丈夫だ、俺が付いている。安心しろ。」
美優は不安な表情を残しながらも、笑顔で頷いた。
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