乾いた日々

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 春になったというものの、まだ風は冷たい。風の冷たさを少しでも凌ごうと胸の辺りで腕組みをし、さらに少し身体を縮こまらせる。 「あ・・・あの・・・私のこと覚えていますか?」 本日、新学期が始まり、始業式を終えた。二年で使う教室は昨年よりも一階低い2階にあった。新しい席は帰ろうとしていた矢先、ある女子生徒に呼び出された。そして、その女子生徒はなぜか深々とお辞儀をしている。 「あの時はありがとうございました。」 腕組みをして身体の側面に出てしまった指先が寒さで痛むことに嫌悪感を抱き、再び姿勢を変えて、手のひらを制服ズボンのポケットに突っ込んだ。 「それでお礼と言っては何ですが、今度お茶でもしませんか?倉橋さんのお口に合うかどうか分からないのですが、スリランカから茶葉を直接仕入れているカフェを見つけました。私も一度行ったことがあるのですが、なかなかおいしい紅茶でしたよ。」
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