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先ほど教室を出た時とは異なり、校舎内の人の姿はまばらであった。楽器を運んでいる吹奏楽部の生徒や掃除の準備をし始めている用務員がいる程度だ。ワックスを塗りたくって、鈍く光る綺麗な床タイルを掃除する必要がどこにあるのだろうと疑問を抱きながら、階段を掃除する用務員を避けて2階へ上がった。そこは物音一つしないほど静かであり、自分の足音しかしないため他に誰もいないように錯覚させる。しかし、しばらく歩いて、新しい教室の出入り口から中を覗くと自分以外の人間はいた。
「進、待たせた。」
預けておいた鞄を机から手に取り、黒板に体を向けている進に話しかけた。こちらに気が付くと進は今まで持っていたチョークを置いて黒板消しを数回上下させた後、欠伸をしながら向かってきた。
「早かったね。何の用事だったの?」
進は自らも鞄を持ち上げ、紐を肩に掛けながら尋ねてきた。
「あぁ、なんでもなかった。あまり重要じゃない。」
「そう。じゃあ、帰ろうか。」
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