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「…きて……」
ユラユラ ユラユラ
水を漂う。
優しく波に揺られると、重い瞼の壁の向こうから微かに声が聞こえてくる。
夢――か?
「ねぇ……」
光に当てた万華鏡を覗いたみたいに、キラキラと光る水の向こうからやってきた人魚が、オレの耳元で小さく囁いた。
反射する水が眩しくて顔は見えねーけど、きっと美人に違いない。
夢だな、夢。
ラッキー。
夢だとわかって、オレは遠慮なくその人魚の顔を、目を細めてジッと見つめた。
やっぱハッキリとは見えない。
けど、絶対美人だ。
根拠のない確信。
これは覚めたくない夢だと思った。
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