第一章

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帰りの駅のホームでまた考えた。 あの彼女の事、医者の事……分かっているのは俺が狙われてる事、確実に非現実に近付いているという事だ。 『向日水~向日水行きの電車がまもなく到着します駅の――』 電車が来たようだ。 早く帰ってあの現場にもう一度行かないと…… 電車に乗ると、誰も居ないようだ。 おかしいな、心無しか、また肌寒い。 車両のドアを開けて誰かが入って来た。 大まかな予想は出来たが。 「あの医者のおかげで脚の痛みは治ったかしら?」 やっぱりか……あの肌寒さから大体の予想は出来た。 予想は出来たが怖いものは怖い。 「何が目的なんだ…って俺が目的なんだっけ?」 俺が話し掛けると彼女はすぐに返した。 トンネルではよく見えなかった彼女の顔がよく見える。 整った顔立ちだがどこか寂しいものを感じる。 「正確には君を亡き者にするって事ね?」 正直笑えないジョークだ。 俺は今逃げなくては確実に死ぬだろう、ここは逃げるのが懸命な判断だろうか。 「じゃあな!」 今にも震えそうな足を動かして、俺は開いているドア目掛けて走った。 「!?逃がさないわよ」 『まもなく発車致します飛び乗り乗車は他のお客様の――』 丁度アナウンスが流れ電車は発車した。 ドアが閉まる前にホームに出れて良かった。 彼女は電車に乗ったままだが。 「今日はバスで帰るか」 ここは大都会なだけあって交通の面ではとっても便利だ。 今日は色々有りすぎた。 バスに揺られながら俺は目を閉じた。
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