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帰りの駅のホームでまた考えた。
あの彼女の事、医者の事……分かっているのは俺が狙われてる事、確実に非現実に近付いているという事だ。
『向日水~向日水行きの電車がまもなく到着します駅の――』
電車が来たようだ。
早く帰ってあの現場にもう一度行かないと……
電車に乗ると、誰も居ないようだ。
おかしいな、心無しか、また肌寒い。
車両のドアを開けて誰かが入って来た。
大まかな予想は出来たが。
「あの医者のおかげで脚の痛みは治ったかしら?」
やっぱりか……あの肌寒さから大体の予想は出来た。
予想は出来たが怖いものは怖い。
「何が目的なんだ…って俺が目的なんだっけ?」
俺が話し掛けると彼女はすぐに返した。
トンネルではよく見えなかった彼女の顔がよく見える。
整った顔立ちだがどこか寂しいものを感じる。
「正確には君を亡き者にするって事ね?」
正直笑えないジョークだ。
俺は今逃げなくては確実に死ぬだろう、ここは逃げるのが懸命な判断だろうか。
「じゃあな!」
今にも震えそうな足を動かして、俺は開いているドア目掛けて走った。
「!?逃がさないわよ」
『まもなく発車致します飛び乗り乗車は他のお客様の――』
丁度アナウンスが流れ電車は発車した。
ドアが閉まる前にホームに出れて良かった。
彼女は電車に乗ったままだが。
「今日はバスで帰るか」
ここは大都会なだけあって交通の面ではとっても便利だ。
今日は色々有りすぎた。
バスに揺られながら俺は目を閉じた。
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