夕暮カタストロフィ

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草木も眠る、深夜二時。 ふとカーテンを開けたら窓の外には鮮やかな夕焼けが広がっていた。 僕は反射的にカーテンを閉め、一呼吸置いてからそっと外を覗いてみる。空は赤い。 目を閉じて目頭を抑える。 いやいや待て。もしかしたら火事かもしれない。きっとそうだ、それは大変だ! 期待を込めて目を開けカーテンを全開にする。 ああ、紛うことなき夕焼けだ! 僕は目を疑うのを止め、思考を巡らせた。 物が散乱した部屋の中、足の踏み場を探す余裕もないので私物を踏みつけながら落ち着きなく歩き回る。 一体何が起こったというのだろう。 ただ僕は、いつも通り自室でひたすら本を読んでいた、それだけなのに。 ……そう、今日僕は一日中ずっと本を読んでいたのだ。よって、現在の僕の時間感覚は狂っていてもおかしくない。 おそらく今は夕方で、目の前にある目覚まし時計が遅れているのだろう。そう考えて、現在の本当の時刻を知ろうと引き出しに仕舞われている腕時計を取り出した。 銀色に光る愛用の腕時計の針は確かに二時を指していた。 全くの同時刻に二つの時計が不具合を生じたーーとは考えにくい。同時に壊れるという確率も大概だが、何よりこの腕時計は外国製の高級品。そう簡単に狂いはしないのだ。 眩暈に襲われながら呆然と窓の外を眺めた。 真夜中の夕焼け。 僅かに水色を残して広がる夕焼けは本当に綺麗で。それがより異常さを際立たせていた。 世界はどうしちゃったんだろうとか、どうしようもなく不安に駆られて、それでも橙色を浴びながら空を見ていたら、不意に腑に落ちる答えが見つかった。 「ああ、きっと。僕がおかしくなったんだ」
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