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「沙織ちゃんはどうして男が苦手なの?」
また顔を真っ赤にしてうつむいた
「…わかりません。でもずっと昔から」
「俺も苦手?」
手に軽く手を添えると沙織の体が小刻みに動き出した
「…沙織ちゃん?」
顔を覗き込むと膝に一滴の涙が落ちた
「…え」
「ごめんなさいっ!」
沙織はばっと立ち上がり外へ走り出した
その素早さは異常なものだった
「待って!」
追いかけて外に出ると入口の前でしゃがんでうずくまっていた
「…ごめん、泣かせるつもりなんてなくて」
なんで泣いたのか正直わからない
ただ手を触っただけなのに
「…あなたが悪いんじゃありません。思い出したら泣けてきちゃって」
小さく言う沙織の隣にしゃがんだ
「何を思い出したの?」
俺を顔を上げてちらっと見た沙織はまたうつむいた
「…ずっと飼ってた犬が昨日死んじゃって」
「そっか」
「なんか、すみませんでした」
頭を撫でようと手を伸ばすと、沙織は顔を上げて笑った
「っ!」
その笑顔が綺麗で目を奪われた
…こんな綺麗な笑顔は初めて見た
金で男遊びをしてるような女とは正反対の笑顔
無垢で無邪気で汚れのない
一目惚れ
まさにこの言葉がよく当てはまる
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