124人が本棚に入れています
本棚に追加
9月10日
私は村田警部とあるビルに来ていた
「刑事になって初めての仕事がこれなんて最悪だな。トラウマになるぞ」
村田警部は白い手袋をしながら笑った
「どうしてですか?」
「飛び降りた死体は形が崩れてる。時任刑事には少々刺激が強いかもな」
「大丈夫ですよ」
私も手袋をして布に覆われている亡くなった人の前に立った
警察官が私達に近づいてきた
「害者の名前は瀬川涼平。29歳」
聞いたことのある名前…
でも絶対彼じゃない
きっと同姓同名だ
村田警部はしゃがんで布に手をかけた
「なに考え事してんだよ。大丈夫か」
「…大丈夫です」
「じゃ、気引き締めろ」
ゆっくりと布があげられた
「っ!」
一瞬にして頭が真っ白になった
…そんなはずない
…そんなはずないのに
違うって信じたかったのに
私は立っていられなくなった
「どうした、時任?顔が真っ青だぞ」
警部がしゃがんでいる私の背中を擦ってくれた
その瞬間涙が次から次へと流れ出した
「…私の、恋人です」
最初のコメントを投稿しよう!