第1章

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楽しかった授業の風景から一転、自己嫌悪に陥ってしまい頭に何も入らなくなる。 その状態のまま時間だけが進んでいき、あっという間に今日の授業は終了。 ……はぁ、またやってしまったよ…… この事についてはなるべく考えないようにはしていても、時たまどうしてもこんな風に自己嫌悪に陥ってしまう事がある。 問いの答えはわかっているのに、それを実行出来ないのはボクの弱さ。 そんな自分が嫌で嫌で仕方ない。 変わりたいのに自分から変わる事が出来ず、いつも変われる切っ掛けを待ち続けている―――それがボク、香月 琥珀(かつき こはく)という人間。 ……もう今日はすぐに帰ろう、これ以上何もする気が起きないや…… そこでボクは考える事を放棄し、ホームルームが終わった直後に鞄を持って退出。 いつも一緒に帰っている久美を待たずに足早に帰宅し、制服から着替えもせずにベッドへと倒れこみ眠りについた。 これまで続いてきたボクなりの平穏な日常。 それはこれからもずっと続いていくものだと思っていたし、こんな自分でもいつかは変われると思っていた。 だけど平穏な日常はボクが思っているよりもとても脆く、ほんの小さな切っ掛けでも壊れてしまう事をボクは知らない。 平穏な日常が壊れてしまったと当人が気付くのは、平穏な日常が壊れてしまったその時。 また平穏な日常が壊れた事には気付いても、平穏な日常が壊れる原因となった切っ掛けに気付ける人は少ない。 ……ただ今回だけは例外、ボクは平穏な日常が壊れてしまった切っ掛けについてはっきりとわかってしまった。 【S.E.A.】 それがボクの……いや、日本中の人々の平穏な日常を壊す事になった明確な切っ掛け。 ―――同時にそれは――― ボクなんかでは到底思いもよらないような事態へと発展していく切っ掛けでもあった―――
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