第2章

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あれから二週間後、ボクは相変わらず変わるための最初の一歩を踏み出せないまま学校での一日を終えた。 ただ今日を含めここ最近はあの時ほど深い自己嫌悪に陥る事は無く、わりと安定した平穏な日常を過ごしている。 「お待たせ、ちょっと待たせちゃったかな?」 「ううん、ボクも終わったばかりだからそんなに待ってないよ」 クラスのホームルームが終わり一人玄関で待つ事数分、階段から下りてきた久美と合流。 簡単な言葉を交わしてから家に向かって歩き始めた。 久美を置いて帰った二週間前のあの日、ボクは家に帰ってすぐに眠ってしまったため久美には何の連絡もしていなかった。 翌日の朝になってから慌てて連絡すると、開口一番に大声で文句を言われたけどそれで終わり。 登校する時にはいつも通りの久美へと戻っていた。 こういう時久美はいつもすぐに事情を察してくれるから本当に助かるよ。 ……その優しさにボクが縋り付いているというのも否定はできないけど。 「―――そう言えばさ、琥珀は【S.E.A.】っていうスマートフォンのアプリの事知ってる?」 久美が珍しくボクを『ちゃん』付けをして呼ばなかった事に驚きながらも、その後に続いた【S.E.A.】という言葉に意識を向ける。 確か二週間前のあの日の昼休憩に小林君も今の久美と同様にその名前を口にしていた。 「……うん、名前だけなら」 その事を思い出しながらも久美の質問に答えるボク。 ボクがその名前を知っていた事に久美自身驚いていたけど、詳しい事は知らないと分かるや否や【S.E.A.】の噂について語り始めた。 インターネット等で久美が調べた【S.E.A.】の情報(噂)は――― 一、【S.E.A.】というのあくまでも略称であり、正式名称は【Spirit Extermination Application(スピリット・エクスターミネーション・アプリケーション)】と呼ばれている。 二、【S.E.A.】は約一千万人もの日本人のスマートフォンにランダムで自動的にインストールされたらしい。 三、アプリがインストールされてから今日で一ヶ月が経つのに、誰一人として未だにアプリを起動出来た人はいない。 四、不思議な事に【S.E.A.】はどうやっても削除不可能。 ―――以上の四つ。 そこまで話したところでお互いの家へと辿り着いたため、最後に久美が『私のスマートフォンにはインストールされてなかったよ』と締め括って別れた。
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