第1章

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「―――?ねぇ、聞いてるの?」 「え?あ、あぁ、ごめん。聞いてなかった……」 学校へと向かう道すがら、あまりの眠たさに意識が何処かに飛んでたみたいだ。 朝ご飯を食べて満腹になったことにより、一度は消えかけていた眠たさが復活。 久美の話を聞いているところをその眠気に襲われ、どうやらボクはそれに負けたらしい。 結果、歩きながら眠るという現象が発生。 ……ボク自身そんな事をやってのけた自分に驚きだよ。 「もう!!琥珀はそうやっていつもぼーっとしてるからあいつらなんかに苛められるんだよ!!」 「……そのくらいわかってるさ」 そう、久美の言う通りボクは一部の奴らに虐められている。 ただ虐めと言っても暴力とかではなく、いわゆるあのパシリと言うやつだ。 事の発端は高校入学直後。 久美とは幼馴染という事もあり普通に話しているけど、他の人と話す時は今みたいにスラスラと話せていない。 何かを話す時にどうしても自分の言葉に自信が持てず、日常的な会話でさえ尻すぼみになってしまうのがデフォ。 久美みたいに付き合いが長ければそんな事は無くなるのだけれど、高校に入学した直後ではそんな人がいるはずもない。 だから誰と話す時でも言葉に覇気が無く、何処からどう見ても気が弱いように見えてしまっていた。 ……実際に気が弱いから否定できないんだけど。 さらにボク自身当時の身長が145と低く、鍛えていたわけでもないから腕っぷしも強くない。 つまりチビで気が弱いという典型的な虐められキャラ、そんなボクを見逃してくれるほど優しい不良はいなかった。 入学初日で目をつけられ、二日目に脅されてビビったボクはパシリに決定。 以来高校生活三年間ずっと奴らのパシリ、毎日のように購買へと走らされて無駄に足が速くなった。 これだけ聞くと何処かのアメフト漫画の彼のようだけど、残念な事に彼みたいにずば抜けて速いというわけでもない。 あくまでも元々の足の速さに比べて、だからね。 ……それにパシられるだけであそこまで速く走れるようになるんだったら、むしろ喜んでやるんだけどな。 現実はそこまで甘くないし、ボクにそんな素質は無かっただけ。 いまさら悔やむようなことでもないよ。
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