第1章

4/9

344人が本棚に入れています
本棚に追加
/333ページ
「それにしても琥珀ちゃんみたいに可愛い奴を虐めるあいつらの思考が理解できないなぁ……」 「可愛いって……気にしてるんだから言わないでよ……」 隣りに並んで歩く久美からの聞き捨てならない言葉に、ボクなりの拒絶の意味合いを兼ねた言葉を返す。 「事実なんだからしょうがないでしょ?」 止めてくれる様子は無さそうだけど。 ……ボクは俗に言う女顔というやつで、服装や髪形によっては度々女性に間違えられている。 自分ではよくわからないのだけれど久美によると、肌の細かさや優しげなタレ目に加え、小顔でいて目以外の顔のパーツも整っているので本当に羨ましいとの事。 男に対して羨ましいってどうなんだろう、とか思うけど口には出さない。 なんたって正直に言えば久美が怒るのは目に見えているからね。 せめて身長が今よりももっと高く、体つきが男らしくなれば間違われないんだろうけどなぁ…… 現在の身長は150センチで18歳の男性にしては痩せ型と言える体つき、という男らしさがほとんど無いのが現状。 可愛いと言われたり、女性に間違われなくなる日はまだしばらく来そうにないや。 その後も可愛いと連呼する久美にげんなりしつつ学校に到着、ボクと久美のクラスは違うのでそれぞれの教室へと別れる。 「おはよー」 「おはよー!!琥珀ちゃんは今日も可愛いね!!」 「あははは……はぁ……」 現在のクラスでのボクの扱いはこんな感じ、久美状態の奴がいっぱいいる。 最初の頃のボクは話し方のせいで『暗そうな奴』という位置づけだったけど、いつの間にか話し方による印象が『暗い』から『儚げ』に変化。 高1の頃のあだ名はチビで暗い奴を略して『チビクラ』と呼ばれていたのに、現在はさっき言われた通り『琥珀ちゃん』である。 軽蔑の意味を込めたチビクラより琥珀ちゃんの方がマシなのだけど、男として複雑なものがあるよ。 まぁ、おかげで学校生活を楽しめるようにはなったんだけどね。 ガラッ!! 「チビクラ来てるかー」 ―――パシられなくなれば、より一層楽しめたと思うけど。
/333ページ

最初のコメントを投稿しよう!

344人が本棚に入れています
本棚に追加