第1章

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教室の扉を開けて入ってきたのは、髪を金色に染め制服をだらしなく着崩している厳つい顔の二人組。 彼らが入ってきた瞬間、教室にいる全員がボクから視線を外す。 別に今日だけの事じゃない、いつも彼らが来たらこんな感じだよ。 「な、なにかな?」 「ふん!!言わなくてもわかれよチビクラ。 ほら今日の分のメニューだ、昼一で買ってこい、俺達はいつもの所にいるからよ」 おずおずと彼らの前に移動したところで突き出される一枚の紙。 そこに書かれているのは購買で販売されている幾つかのパンの名前、彼らの昼飯となるものだ。 「う、うん、わかった……」 自分でも情けなくなるほど小さな声で返事をして、何かのノートの切れ端だと思われる紙を受け取る。 紙切れをボクに渡すだけ渡すとさっさと教室から出ていく彼ら。 しかし教室で出る直前でこちらを振り返り、ボクに向って一言。 「遅れたら……わかってるよな?」 「う、うん!!わかって、るから……」 予想外の一言に慌てて返事するボク。 それを見て何が楽しいのかニヤニヤしながら彼らは去っていく。 ……はぁ、いつもながら彼らと話す時は本当に疲れる。 「ご、ごめんな。いつも庇ってやれなくて……」 彼らが出ていったのを確認してからボクに話しかけてくるクラスメイト。 「ううん、気にしなくていいよ。 別にいつものことだから…… それにボクが我慢すれば皆に迷惑かけなくて済むんだからお安い御用だよ」 「琥珀ちゃん……」 これはボクの本音。 あの二人は自分達がイラつけばすぐにでも手を出すような奴らであり、一度ボクを庇おうとしたクラスメイトに実際手を出したこともある。 結果はクラスメイトは全身打撲で病院送り、手を出した二人は停学というもの。 ただボクを庇ったがためにこのクラスメイトは全身に怪我を負わされた。 この時の事を他のクラスメイト達も知っているからこそ、二人を恐れボクを庇うのを躊躇っているんだ。 それを責めたりなんかしない、立場が違えばボクもその誰かを庇えるだけの勇気なんて無い。 自分に出来ない事を他人に求めるのは筋違いだしね。 元々はボク自身が招いた事であり、皆の責任ではないのだから。 ボク一人が我慢すれば、他の人が嫌な思いをしなくてすむならなおさらだよ。 だからクラスメイトに言った言葉は間違いなくボクの本心。 それにもう二年我慢してきたんだ、残り数か月ぐらいわけないさ。
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