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「……おいチビクラ!!おせぇぞ!!」
「ひっ!?ご、ごめん……頑張って走ったんだけど……」
二人のもとへと辿り着くと同時にボクは思いっきり怒鳴られた。
怒鳴ったのは朝去り際に一言言い残した小林 卓也(こばやし たくや)、入学初日にボクに目をつけた張本人で金色に染めた髪をツンツンに立てており、耳にはキラキラとした金色のピアス。
「ほら、さっさと寄こしな!!」
「は、はい!!」
そしてたった今ボクの手からパンを奪い取ったのが柴木 和希(しばき かずき)、いつも小林君に引っ付いている子分のような人だ。
髪型なんかは小林君と同じなんだけど、ただ一つ違う点が右腕にある刺青。
実の親に彫られたという噂は聞いた事はあるけど詳しい事は知らない。
真相は少し気にはなるけど、そんな事怖くて本人には聞けないよ。
「そ、それじゃボクはこれで……」
とりあえずこれで用は果たしたんだ、難癖をつけられるよりも早く帰らないと……
「ちょっと待てよ、チビクラ」
だけどその願いは叶う事なく、ボクは小林君の声によって引き留められた。
次は何を言われるんだろうか……
不安を抱きながら恐る恐る振り向くと、小林君はボクが買ってきたパンの包装を破きながら何気ない口調で尋ねてきた。
「チビクラ、お前【S.E.A.】って聞いた事あるか?」
「【S.E.A.】……」
何の事だろう?
呼び方からして何かの略称みたいだけど……
「……いや、知らないならいい。
さっさと消えろ」
ボクの反応から知らないと判断したのか、小林君は邪険にそう言い放つ。
わざわざ言われなくても二人にパンを届けるという用が済んだ以上、ボクにとってもここにいる理由なんて無い。
「じゃ、じゃあ、ボクはこれで……」
どうせ返事なんて返ってこないけど、一応それだけ告げてボクは自分の教室へと戻った。
―――今日の昼休憩に初めて聞いた【S.E.A.】という言葉。
どうせボクには関係無い事なんだとばかり思っていたけれど……
思いもしないところでボクは再びこの【S.E.A.】という言葉を耳にすることになったんだ。
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