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それは、港での出来事の数分前のことだった
場所は二之原(ふたのはら)高校
そこは、この地域で二番目に優れた学校であり、入学者には国から安心な将来を約束されているほどの絶対的な権力も備わっている
中では下校のチャイムが鳴り、用のない生徒は教室を出て、すぐさま帰宅していく
「おーい浩人、この後とか暇か?」
後ろからクラスメートに名を呼ばれた、佐野 浩人は手の動きを止めて振り向く
見てみれば、二人の男と三人の女子が近付いてきていた
……人数合わせの為に呼んだのだろう
一瞬、面倒くさそうな表情をしたあと視線をバッグに戻し、再び動きを再開させる
浩人は今まで、こういった誘いを断り続けており、このように誘いが来ること自体が珍しい事である
浩人自身はそれを別に珍しい事と思わず、いつも通りの言い訳でその場を通そうとする
「いや、今日はちょっと用事があるからさ……」
大抵はこの言葉でその場を通せるはずだが、呼び掛けた男はしつこく、浩人の道を立ちふさがるように邪魔をする
そして浩人の首の後ろに手を回し、他に聞こえないように耳元で呟く
「マジかよ?アイツ等、お前の話を聞きたがっていたのに」
「俺の話?」
徐々に苛立ちを感じ始めた浩人は首に置かれた手を払いのけ、男が指をさした方向に視線を向ける
アイツ等、と指をさされた三人の女子は珍しい物を見るようかのような目で浩人を見つめる
……はぁ、今日は厄日だな
話をしないと帰れないことを悟った浩人は、素直に従うように女子に歩み寄る
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