8.直前、そして本番

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ハルナの第一志望と私の併願校の入試日の前日だっただろうか。 「そこのおふたりさん」 ハルナと職員スペースの前を通りかかったとき、西川先生に呼ばれた。 遠藤先生も一緒だった。 「?」 「これ。応援してるよ。解答用紙に全力をぶつけておいで」 それは、教室の先生全員からの寄せ書きだった。 「わぁぁ!ありがとう…!!大切にする!」 すごく嬉しかった。 先生全員が、私達の合格を祈って書いてくれたんだ。 その思いに、こたえたい。 ひとりひとりのメッセージを何度も読み返した。 先生たちにお礼を言って自習室に戻ろうとすると、 「もうひとつ」 今度はエンドゥーに呼び止められた。 「これ」 「!」 渡されたのは、先生のCDだった。 「先生、ほんとに………!!」 ハルナもびっくりしている様子だ。 「そうだ、蒼井。サインペン持ってる?」 「これで良ければ……」 先生は私からサインペンを受け取り、まず「ハルナへ 絶対合格!」と書いてからサインをした。 そしてそのCDをハルナへ渡す。 「わぁ、ありがとうございます。」 反応は相変わらずクールだ。 次に私の分、 「蒼井マン 必勝合格!」と書かれた。 「サインかっこいい!てか、蒼井マンとか~(笑)」 「蒼井は塾の平和を守る蒼井マンだからね(笑)」 「守れないよー? CD、本当にありがとう!」 「おう!」 まさか本当にくれるなんて思ってなかった。 裏面の一覧を見ても、知らないタイトルしかない。 あぁぁ、早く聴きたい! でも、受験終わるまでは我慢だ。 「バカになるから、試験終わったら聴きなね」 「バカにはならないけど、了解でーす!」 きっとそのときの私は気持ち悪いくらいに満面の笑みだっただろう。
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