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―――エンドゥーの最後の授業の日。
ミアを除けば、小6受験クラスの全員が揃っていた。
授業を普段より早く切り上げた先生は、こんな話を最後にしてくれた。
「ドーナツの穴ってさ、そこには何があるんだと思う?」
先生の真面目な話は深い。
私たちは全員、真剣に耳を傾けた。
「ドーナツの穴ってさ、“そこ”には“何もない”んだよね。周りの生地の部分があるから、“穴”が存在するんだ」
「存在が見えないもの、例えば、友情とか信頼関係とか、努力とか。目に見えないから、本当に“ある”のか、不安になることもあると思う」
「…………」
先生は身振り手振りを交えて、小6にもわかるように噛み砕いて話してくれる。
「でも、そういうときは思い出してほしい、輪っかの存在を。輪っかは自分自身と周りの人たちが作ってるんだ。自分が自分の輪っかを作ることもあれば、誰かの輪っかの一部になってることもある」
「輪っかがある限り、穴はなくならないから。試験会場とかで不安になったら、この話、思い出してみてね」
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