1人が本棚に入れています
本棚に追加
満月。
満月だ。
個人的には十六夜のが好きだが、満月も悪くない。
「三日月とかも好きだけどね、っと」
大きく膝を曲げ、コンクリートを蹴る。
体は重力に逆らい、上へ。
そして重力に従い、下へ。
着地した先、ビルの屋上にヒビが入るが…まぁ、それはあんまり気にしない方向で。
そしてもう一度膝を曲げ…。
跳ぶ。
目的地の立体駐車場まではあと少し。
と、思いきや。
「あら?ちょっとちょっと、なーんでもう車出してくれてんの?」
黒い、高級車めいた車。
スモークガラスは乗ってる人間の罪悪感だろうか。
「跳ぶ前で良かったよ、んじゃちょっくらご挨拶しますかね」
方向を変えて、跳躍。
俺が空中を行く間に、車は山の方へ。
短いスパンで跳ぶ事で、車を追跡していたが、山の入り口で大きく跳んで、先回りする。
曲がりくねった山道を行く車のボンネットに、上から落ちるためだ。
そして。
ドンッ!!と、俺が着地した衝撃で、完全に車は逝ったのか、進まなくなり、フロントガラスにはヒビが。
「パニック映画みたいで、悪くないだろ?」
そう呟くのが聞こえたのか、アクション映画の対応をされる。
つまり、発砲。
運転手がスーツの内ポケットから取り出したのはグロック18。
隠し持つには最適な銃だ。
頭に狙いをつけて、二発。
どこかで聞いたマニュアル通りの攻撃。
「んー、まぁ、悪くないけどちょっと足りないかな」
首を振って避ける。
そして、そのままガラスに手を突っ込み、運転手の首を掴む。
「しかも邪魔だ」
ドアに叩きつけ、吹っ飛ばす。
後部座席でガタガタと見苦しい音が聞こえるが、気にしない、気にしない。
両手でルーフを押し上げるように剥がし、オープンカーに変えてやる。
「ひぃぃ!?」
「やぁ。アンタだよな、射車製薬の多田さんって」
「ば、ばけ、化物!」
化物!と来ましたか。
まぁ、確かにねぇ。
化物だわ、これは。
うんうん。
「うっせぇよ、非合法な人体実験繰り返し、挙句手前の為に薬つくって女襲ってたクソ野郎が。大方俺がお前狙ってる事知って?溜め込んだ金でボディーガード雇ったんだろうが…足りねぇよ、質も量も」
「あ、あ、あ」
逃げようとする阿呆のスーツの裾を踏み、逃げられないようにする。
「た、助けてくれたら、薬分けてやる、な?な?」
「諦めな。興味ねぇんだわ」
そう答えてやり、垂直に車体を拳で貫く。
「ひっ」
衝撃は、ガソリンタンクを破り、爆発を引き起こす。
最初のコメントを投稿しよう!