~異形~

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満月。 満月だ。 個人的には十六夜のが好きだが、満月も悪くない。 「三日月とかも好きだけどね、っと」 大きく膝を曲げ、コンクリートを蹴る。 体は重力に逆らい、上へ。 そして重力に従い、下へ。 着地した先、ビルの屋上にヒビが入るが…まぁ、それはあんまり気にしない方向で。 そしてもう一度膝を曲げ…。 跳ぶ。 目的地の立体駐車場まではあと少し。 と、思いきや。 「あら?ちょっとちょっと、なーんでもう車出してくれてんの?」 黒い、高級車めいた車。 スモークガラスは乗ってる人間の罪悪感だろうか。 「跳ぶ前で良かったよ、んじゃちょっくらご挨拶しますかね」 方向を変えて、跳躍。 俺が空中を行く間に、車は山の方へ。 短いスパンで跳ぶ事で、車を追跡していたが、山の入り口で大きく跳んで、先回りする。 曲がりくねった山道を行く車のボンネットに、上から落ちるためだ。 そして。 ドンッ!!と、俺が着地した衝撃で、完全に車は逝ったのか、進まなくなり、フロントガラスにはヒビが。 「パニック映画みたいで、悪くないだろ?」 そう呟くのが聞こえたのか、アクション映画の対応をされる。 つまり、発砲。 運転手がスーツの内ポケットから取り出したのはグロック18。 隠し持つには最適な銃だ。 頭に狙いをつけて、二発。 どこかで聞いたマニュアル通りの攻撃。 「んー、まぁ、悪くないけどちょっと足りないかな」 首を振って避ける。 そして、そのままガラスに手を突っ込み、運転手の首を掴む。 「しかも邪魔だ」 ドアに叩きつけ、吹っ飛ばす。 後部座席でガタガタと見苦しい音が聞こえるが、気にしない、気にしない。 両手でルーフを押し上げるように剥がし、オープンカーに変えてやる。 「ひぃぃ!?」 「やぁ。アンタだよな、射車製薬の多田さんって」 「ば、ばけ、化物!」 化物!と来ましたか。 まぁ、確かにねぇ。 化物だわ、これは。 うんうん。 「うっせぇよ、非合法な人体実験繰り返し、挙句手前の為に薬つくって女襲ってたクソ野郎が。大方俺がお前狙ってる事知って?溜め込んだ金でボディーガード雇ったんだろうが…足りねぇよ、質も量も」 「あ、あ、あ」 逃げようとする阿呆のスーツの裾を踏み、逃げられないようにする。 「た、助けてくれたら、薬分けてやる、な?な?」 「諦めな。興味ねぇんだわ」 そう答えてやり、垂直に車体を拳で貫く。 「ひっ」 衝撃は、ガソリンタンクを破り、爆発を引き起こす。
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