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「霧生くん、ちょっといいかな?」
「えっ…あ、なにかな、岸辺さん」
忘れもしない二年前の昼休みだった。
当時の俺が憧れていたクラスのアイドル的女の子、岸辺七美さんが話しかけてきたのだ。
自分で言うのもなんだが、俺は冴えない男子。
女の子と話す、というだけで緊張してしまうのに、それが憧れている岸辺さんだなんて尚更だ。
「今日、ちょっと時間ある?もしよかったら…放課後、この教室にきて欲しいんだ」
顔を赤くして、潤んだ瞳での上目遣い。
「もちろん!!」
それから普通に授業があって。
時折目があうと手を振ってくれたりして。
舞い上がっていた俺は、何も疑わず放課後の独特の寂しさを感じさせる教室にいた。
告白とかかな、うわ、だったらどうしよう…という思考を五週くらいした段階でもうどれくらい舞い上がっていたかはお察しだと思う。
「トイレ行ってこよ…」
頭を冷やすため、水でも被ろうとした俺は、自分の席を立ち―グワンッと大きく揺れた。
それから激痛。
瞬間的に何が起きたか理解出来なかった。
そして振り返ると、そこには。
金属バットを振りかぶった岸辺さんがいた。
あの金属バットは野球部の仁科のだ。
そんな事に気付いた時、二発目が襲ってきた。
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