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車のキーを人差し指に引っ掛けてクルクルと回しながらクールに借家の玄関を出る。
良い男はいついかなる時も良い男でなければならないのである。
雲ひとつない青空の下、俺は颯爽と愛車に乗り込んでキーを回す。
ちなみに俺の愛車は1963年製、フォルクスワーゲンのビートルだ。
低く渋いエンジン音が全身を痺れさせる。
この脳まで痺れるような振動がアンティーク車の醍醐味である。
「お? ビートルちゃん今日は調子良いねぇ!」
アンティークの車は良い女と同じで、いきなり機嫌を損ねるから丁寧に扱ってやらなきゃならない。
つまり、女の扱いも一流でなきゃ乗るに値しないってわけだ。
俺はサングラスを掛けて煙草に火を付ける。
ひとくちめを大きく吸い込み、ゆっくりと吐き出した。
紫煙が開けられた窓から流れていく。
「よっしゃ! 行くかねぇ!」
俺はお気に入りの曲を聴きながら華麗なハンドルさばきで事務所へと向かう。
事務所というのは俺が所長を務める探偵事務所だ。
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