55人が本棚に入れています
本棚に追加
/187ページ
「さっすがニーさんそんな格好してるだけあってプレっスリ~の良さがわかってんじゃねぇ~か」
いつの間にかプレスリーの話題で盛り上がり、しこたま酒を呑み続けている。
「シュウさんこそなぁかなぁかのモンですょ~」
二人とも完全にへべれけだ。
「ったく最近のロックはよぉ~ロックンロール魂がねぇんだよ~オヤジ! 酒おかわり!」
「そぉ~なんですよぉ~」
「よぉし! 俺達でロックを復活させるぞ!」
俺は勢いよく立ち上がった拍子に受け取ったばかりの酒を全部ぶちまけて二人とも酒まみれになった。
「ち……ちょっと何するんれすかぁ」
「バァカ野郎! こんなモン脱いじまえ! 服なんか無くてもロックはできるだろうが! よぉし! これからロックに乗り込むぞぉ!」
「ロックってどこですかぁ? 僕もう眠いんですけどぉ……」
「ロックって言ったら決まってるだろぉが」
「僕はいいですよぉ」
そう言うと、プーさんはカウンターに突っ伏した。
「俺は一人でも行くぞぉ!」
俺は酒まみれになったジャケットを脱ぐと、タイミングよく来たタクシーを止める。
「お客さん、どこまで……って酒くさっ! シート濡らしてもらっちゃ困りますよ」
タクシーの運転手がしかめ面で言った。
「ああ、そうか。オヤジぃ、明日取りに来るから預かっててくれ!」
酒にまみれたジャケットとズボンを仕舞いかけの屋台に投げる。
「それで、どこまで?」
「富士まで」
~fin~
最初のコメントを投稿しよう!