4日目『正義の味方は密の味』

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「ねぇ。どこ行くの?」 「いえいえ! そんな方向では行きませんよ!?」 あ、そっちじゃないですよね。 まいった……オッサンが更に乗り出して来たせいでめっちゃ顔近いし、何か色々ワケわかんなくなってきた…… もうとりつかれちゃってんだし、いっそちゃんと顔見てみるか? もしかしたらチャーミングな口元してるかもしんないし。 男なら根性見せてみろ松浦秀作! せーのでいくぞ? せーので! せーのっ! 「……オヤジ……家出してこんなトコで何やってんだ?」 この眼鏡かけたズルズルの未知の生物は間違いなく最近家出したらしい俺のオヤジだ。 半年前はここまでハゲ散らかってなかったはずだが…… 「なんせ行く所がないからな」 つーか、家出して来たくせになんで堂々としてんだよ。 なんで堂々とハゲ散らかしてんだよ。 進行ハンパねぇな。 「いやいや、家に帰れよ」 「今だから言うけどさ……父さん山の生まれじゃん? 魚苦手なんだよね」 実家の飯ってほとんど毎日魚出てたよね? むしろ今までよく我慢してたよアンタ。 そりゃハゲるわ。 てか三十年も夫婦やってりゃいくらでも言うタイミングあっただろ。 「今更言い出しにくくてな……」 マグロかサンマで頭悩ませてるのに、そもそも魚が嫌いだとはオカンも衝撃の事実だわな。 ああ、あとアジか。
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