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「それに困っている人を放っておくなんて正義の探偵の名が廃りますよ? 世界平和の為に闘うのが正義の味方なんです! 沖縄なんて近いものですよ!」
頭に生えた大きく丸い耳がキラリと光る。
「バッカヤロウ! あの有名な赤いマフラー着けた正義の味方だって本当は市内ぐらいしか守ってないからね!? バイクで移動とか市内ぐらいしかムリだから!」
「でも悪の組織ですよ!? 放っておけないじゃないですか! 沖縄行けるし!」
く……沖縄旅行がかかっているだけに簡単には引き下がらないか……
なんとかせねば……
この手しかないか。
「実はな……」
俺が真顔で声を潜ませると、まさみは目を輝かせて聞き耳を立てる。
女って生き物はとかく秘密事が大好物なモノなのだ。
「俺も悪の組織と闘う正義の味方なんだよ」
「本当!?」
「あ……ああ、本当だ。誰にも言うなよ? 正義の味方だって事がバレたら大変な事になるからな……頼むぞ?」
こんな事言ってるのがバレたら外歩けなくなっちゃうからね。
俺完全に村八分だからね。
俺が辺りを見回すふりをすると、まさみは両手で口を押さえて頷いている。
「正義の味方にはテリトリーがあってな、他のエリアには手を出しちゃいけないし、秘密裏に動かなくちゃいけないんだ。わかったか?」
「だからバイクでも大丈夫なんですね?」
まさみも声を潜ませて納得したように頷く。
「そうだ」
まぁ彼は全国放送でテレビ出ちゃってますけどね。
てか何やってんだ俺?
正義の味方になっちまったよ。
まさみは納得したのか名残惜しそうに手紙をしまうと、手鏡で耳の位置を整える事に専念し始める。
「ふう」
朝から疲れるぜ。
デスクの椅子にドカリと座り直してインターネットを開き、ニュースの見出しに目をやった。
『人手不足により、あの組織が戦闘員を急募!』
マジかよ……
~fin~
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