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むしろ、俺は常日頃から俺のような探偵など必要のない世の中になればいいと考えているのだ。
考えてもみろ。
警察も探偵も必要とすらしない世の中を。
警察や探偵がいなくても皆が平和で安全に暮らしている世の中を。
それこそが、発達した知能を持つ人間が目指すべき世界ではないのか?
「シュウちゃん! お客さんが依頼したいんだって!」
まさみが目を丸くして戻ってきた。
「な……!?」
火をつけようと口にくわえた煙草が落ちそうになったが、俺は余裕をもってゆっくりと椅子から立ち上がり、小さく溜め息をつく。
やはり、理想の世界は未だ遥か遠く、悲しいかな俺の力が必要とされているようだ。
「何を慌てているんだ。こちらにお通ししろ」
俺の落ち着いた声にまさみは力強く頷くと、再び玄関の方へと向かった。
依頼キターーーー!!
久しぶりの依頼キタヨーーーーー!!
俺は黒いハットをパーマのかかった頭に乗せ、クールな出で立ちで客を迎える。
一流の探偵は、立ち振舞いさえも一流でなくてはならない。
それが依頼主に安心感を与え、ひいては己が信用にも繋がるのだ。
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