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「まさか……松浦秀作……か?」
現れた客の男に突然フルネームで呼ばれ、俺は足を止めた。
紫の下品なスーツに金髪の頭、これまた紫がかったサングラスの奥から覗く瞳には驚いたような色がうかがえた。
腕につけられた金色の腕時計が下品さに更に磨きをかけている。
どう見てもその筋のご職業の方だ。
職業柄、チョイ悪オヤジというか、チョイ悪オジキ的な方々にも多少の面識はあるが、この男には全く見覚えがない。
ここまでベタベタな方なら記憶に残っているはずである。
「あの……どちらさまで?」
「シュウちゃん! 俺だよ俺!」
男はそう言って紫がかったサングラスを外した。
鳥のような出っ歯に左目の下には大きめの涙黒子。
「まさか貴様……闇の錬金術師か!?」
思いもよらぬ来訪者に、俺は右足を一歩後ろに引いた。
「そうそう、懐かしいな!」
俺の様子などお構い無しに、男は笑いながら事務所の中にズカズカと上がりこんできた。
闇の錬金術師。
高校のクラスメートであり、高校生にして、信じられない方法でお金を生み出す世にも恐ろしい禁断の錬金術をあみだした男である。
その錬金術とはこうだ。
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