55人が本棚に入れています
本棚に追加
「とりあえず話しぐらいは聞いてやるか」
俺は対面式のソファーにどかりと腰掛け、闇の錬金術師を正面のソファーに座らせる。
言っとくけど別に下心があるワケじゃないからね?
救いの手を求めている人がいれば、手を差し伸べるのが俺の使命だからね?
まあ、コイツは究極のクズだが、その女性に罪はないし。
うん。
早くに旦那を亡くしちまって大変だろうし。
きっと俺の助けを待ってるしな……三十代の美人な未亡人が!
話しを詳しく聞いてみると、どうやら未亡人は亡くなった旦那が愛用していた物を探しているらしい。
旦那を亡くした寂しさをまぎらわせようとしているのだろう。
「シュウちゃん今から出れる? 直接聞いた方がいいだろ?」
「当然だ」
美人の未亡人が俺を待ってるしな!
窓の外に目をやると、灰色の空からパラパラと雨が降りだしていた。
助手のまさみに留守を任せると、俺は年代物のフォルクスワーゲンの助手席に闇の錬金術師を乗せ、未亡人の待つ場所へと車を走らせた。
雨はあっという間に土砂降りになり、ワイパーのスピードが追い付かなくなった。
窓に流れる雨が全く切れていない。
年代物という事もあるが、こうなってはワイパーブレードとは名ばかりでは完全になまくら刀だ。
最初のコメントを投稿しよう!