55人が本棚に入れています
本棚に追加
まるでホールのような客間に通された俺と闇の錬金術師は、これまたヘソまで埋まりそうなほどフカフカのソファーに座らされた。
見たこともないほど豪華に飾られた部屋が、ラスボス感に一層磨きをかけている。
「これなんです」
俺は大理石のテーブルの上に置かれた一枚の写真を手に取り、食い入るように覗き込んだ。
中年の男が龍の装飾が施されたグラスを片手に満面の笑みを浮かべている。
この中年の男が亡くなった旦那であり、旦那が亡くなった時に一緒に割れてしまったこの龍の装飾が施されたグラスを見つけて来て欲しいとの事であった。
これほどの豪邸に住んでいる男が愛用していたとなると、何かしらで名の通ったグラスであろう。
それにしても、なんて趣味の悪いグラスだ。
魔王専用のグラスか?
「お願いできますか?」
ラスボスが潤んだ瞳と天使の声で囁いた。
ヤバイ、目を合わせたら絶対に殺られる。
断ったりしたら挽き肉にされる。
「わかりました……探してみましょう。これはお借りします」
俺は俯きかげんのまま、写真を懐にしまった。
ラスボ……いや、素人にはムリでも俺ほどの一流の探偵になれば、この程度の探し物は二日もあれば見つける事は簡単なはずだ!
俺は三日後に連絡すると言い残し、魔王の城を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!