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事務所のデスクで頭を抱えている俺など気にも留めずに、助手のまさみは鼻歌混じりに頭に付けた丸い耳を整えている。
ヤバイ……
ヤバイよコレ……
あれから三日経ってまだ何の情報も得られてないし!
俺殺られちゃうよ!
このままじゃ完全にゲームオーバーだよ!
俺復活の呪文知らないよ!
帰り際に傘は返してもらったけど、あんなのただのひのきの棒だし!
その手の物に詳しい人間に聞いたり、ありとあらゆる手段を用いて調べても、それらしき物の情報は一切流れて来ない。
裏社会の大物の間でしか情報すら流れないそうとうな値打ち物なのかも知れない。
茫然自失のまま事務所を出た俺の足は、昼飯時が近いという事もあってか、無意識に近くのラーメン屋へと向かっていた。
最近、商店街の百均の目の前にできたラーメン屋である。
タイミングが悪くてなかなか食べれないが、格安で美味いランチセットが俺のお気に入りだ。
今の時間なら確実に食べられる。
ラーメン屋に入った俺はブランド物の靴を脱いで座敷に上がり、右手を軽く上げて店員を呼ぶ。
「何にいたしましょう?」
店員が注文をとりながら水の入ったグラスをテーブルに置いた。
「え……?」
そのグラスを見た俺は、目を丸くして慌てた。
間違いなくあのグラスだったのである。
「オヤジ! このグラスどこで手に入れた?」
「どこって……」
俺が腰を浮かせて尋ねると、店のオヤジは怪訝な表情で窓の外を指差して答えた。
指し示されたその先に目をやると、そこにあった看板には……
『なんでもあります! 全品百円均一!』
~fin~
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