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木製バットを持つ手に、若干力を込め、慎重に近づく。
だんだんと姿が見えるようになってきた。
俺と同じ高校の男子生徒の夏用の制服で、黒い短髪に黒ぶちメガネ。
……5組の委員長、縁だ。
縁が寝そべったまま、こちらを向いて挨拶してくる。
「やあ、エーリ。珍しく嬉しそうな顔してるじゃんか。 可愛い女子でも見つけたのか?」
安心したから、顔が緩んでしまった。
…なんか恥ずかしい。
少し落ち着いてから、言葉を返す。
「道端にイケメンが落ちてるのを見つけたんだ」
「そうか。その落ちてたカップ麺、大事にしろよ」
『イケメン』を『カップ麺』と聞き間違えるのは無理がある、せめて『つけ麺』だろ。
「すごい聞き間違えだな。 悪いのは耳か? それとも頭か?」
これに、縁が堂々とした顔で返す。
「悪いのは、この世界だ」
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