4+1つの扉と影

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木製バットを持つ手に、若干力を込め、慎重に近づく。 だんだんと姿が見えるようになってきた。 俺と同じ高校の男子生徒の夏用の制服で、黒い短髪に黒ぶちメガネ。 ……5組の委員長、縁だ。 縁が寝そべったまま、こちらを向いて挨拶してくる。 「やあ、エーリ。珍しく嬉しそうな顔してるじゃんか。 可愛い女子でも見つけたのか?」 安心したから、顔が緩んでしまった。 …なんか恥ずかしい。 少し落ち着いてから、言葉を返す。 「道端にイケメンが落ちてるのを見つけたんだ」 「そうか。その落ちてたカップ麺、大事にしろよ」 『イケメン』を『カップ麺』と聞き間違えるのは無理がある、せめて『つけ麺』だろ。 「すごい聞き間違えだな。 悪いのは耳か? それとも頭か?」 これに、縁が堂々とした顔で返す。 「悪いのは、この世界だ」
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