4+1つの扉と影

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影は50メートルほど先にいる。 5の扉は300メートルほど先、影の向こう側だ。 影は右手にクワを持ち、引きずりながら、ゆっくりとこちらに近づいてくる。 2人とも、バットは重いので、3の部屋に置いてきてしまった。 「なあ、知ってるか、縁」 「………なにを?」 俺たちも少しずつ後退する。 「アレ、『備中グワ』って言うんだぜ」 「へぇー…。じゃあ、あいつは今日から『びっちゃん』だな」 影がクワを引きずる音が、恐怖心を掻き立てる。 「『いっちゃん』とカブるから、それはやめてくれよ…」 2人は冷や汗をかきながら、後退を続ける。 「……そんなことよりさ、エーリ。……聞きたいことがあるんだ」 影が少しだけスピードをあげた気がした。 「………質問をどうぞ」 影との距離が縮まってきた。 「その…、備中グワってのはさ……、どういう時に使う物なんだ?」 このまま後退を続ければ、あと少しで3の扉に着くハズだ。 「……畑を耕す時とかかな」 あ、やっべ。後ろ向きで歩いてたから、扉、通り過ぎちゃった。 「…エーリ。ここ、レンガばっかで、土すらないぜ……?」 3の扉はすでに、影の横にある。 「……じゃあ、何を耕すんだろうな……」 なおも後退を続ける2人。 「……俺、耕されたくない。畑の土って、いつもこんな気持ちだったのか………?」 そろそろかな…。 「縁」 「エーリ」 目が合う。 「走るぞ!!!!」
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