プロローグ

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運転手の姿が見えない電車は、今だに走り続けている。 縁が吊り革で体操選手みたいなことをやろうとしているが、気にしないでおこう。 電車がトンネルに入る。 こんな大きな山に、よくトンネルなんて掘れたな。 これだけ大きい山だから、線路を迂回させるのも難しいのだろう。 ここらが、険しい山々が連なる地帯であることも原因のひとつだろう。 さっきのたくさんの乗客たちは、あんな所で降りてどうするのだろうか? トンネルに入って数秒が経った。 トンネルの入り口からの光の量も減ってくる。 電車の照明が消えているので、真っ暗でなにも見えなくなる。 「見たかエーリ! 今の技すごくカッコよくなかったか!?」 「暗くて見えないよ。ていうか、危ないからやめてくれ」 「危ないからこそ、やる意味があるんだろ?」 「意味わかんねーよ」 ……さっきから明日奈が一言も喋ってない。 あいつは慌てたら口数が増えるタイプなんだけど…。
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