49人が本棚に入れています
本棚に追加
女の子を見送った後、俺も掲示板を確認しに校舎に戻った。
本日、13時より追試
対象者は全員
真新しい貼紙には教授印と共に、それだけが書いてあった。
「気づいてよかった。先輩の言ってた通りだね。」
「加藤教授は変わり者だから気をつけろって、本当だね。」
俺は横の会話を聞いて、教えてもらえた事を感謝した。
友達がいない俺にはなんの情報も入ってこないと痛感した。
1時少し前に追試が行われる教室に行くと、さっきの女の子はもう来ていた。
しかし何人かの友達と喋っていて、俺にはお礼を言う度胸はなかった。
追試が終わった後も女の子が1人になることはなく、俺はお礼が言えないまま家に帰った。
今まで自分の殻に閉じこもる様に過ごしてきた俺は回りの事など気にしていなかったが、よく見てみれば女の子と俺はいくつも同じ授業を取っていたらしく、その後も何度も試験で同じ教室になった。
日が経てば経つほどお礼は言えなくなり、ついに俺はお礼が言えないまま春休みに突入してしまった。
それでもあの女の子を目で追うようになった俺の日常は、少しだけ価値のあるものになった気がしていた。
最初のコメントを投稿しよう!