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「じゃあ訊くが、そんなおいしい話を知っている癖に、なぜ“西”の人間はわざわざ高い関税を払って、サラセン人から香辛料を買っているんだ?」
そう。
当時“西”こと西欧諸国は、地中海や陸路を通してサラセン(イスラム諸国)から、莫大な対価を払って香辛料を買っていた。
ジョアン達はその香辛料に払う対価を目当てに地中海で“西”の商船を襲っていた。
香辛料に興味はない。“西”では高く売れるかも知れないが、海賊が香辛料を売ったところで捕まって取り上げられるのがオチだ。
哀れな貴族は泣きながらジョアンに答えた。
「そ、それは……。神々が、南方航路を解禁するには、まだ早すぎると、教会を通して仰るからです。」
そう答えた後、貴族の男は天罰を恐れ、神々が住むという“天空”に懺悔の祈りを捧げた。
その姿を見つめながら、ジョアンは大嫌いな神に唾を吐くように、空に唾を飛ばした。
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