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「お、女の人だって、戦っているのに、男の僕が、震えちゃいけないんだ!」
実際、バルバリアから来た船達は、この圧倒的に不利な状況でも闘志を燃やしていた。
「バルバリア海賊の意地を見せてやれ!」
男も女も関係なく、砲撃の雨に突入しながら『聖マルコ号』の活路を切り開いていた。
そんな姿を頼もしいと思う反面、マストの上から絶望的な不利を見つめ続けているトマは、地獄絵図に恐怖を拭えなかった。
「トマ。」
急に優しい声がして、震えるトマを優しく抱きしめた。
「ユーリ……。」
ふたりの付き合いは長い。振り返らなくても、声と匂いでお互いがすぐにわかる。
「まだ小さいのに、ずっとこんな景色を眺めるのは良くない。俺が見張りを変わろう。」
「ユーリ!」
ふたりは暗殺組織で育てられた。にも関わらず、トマの人懐っこい性格と明るさを決して失わない姿を、ユーリは腹の底から守りたいと思っている。
トマも人を殺す術は空っきしでイジメられていたのに、いつでも助けてくれるユーリを実の兄のように慕っていた。
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